2018年
5月の星空


天の冠




 晩春の深夜、天頂には冠が輝いている。
 酒神・ディオニューソスが地中海・クレタ島の王ミーノースの娘・アリアドネーに送ったとされる冠。
 街の光の上空では何だかわからない春の星々だけれど、深く黒い夜空では整った形の冠は他の星座を探すスカイマークの役割を果たしてくれる。
 その冠にひときわ明るく光り輝いているのはα星・アルフェッカ。アラビア語で「欠けたものの明星」の意味があるのだとか。アラビアでは冠≠ニは見ずに、ここに欠けたお皿≠見ている。2等星だが、近くに明るい星がないこの場所では目を引く存在だ。
 このα星は「ゲンマ」の別名もある。こちらはラテン語で宝石=B冠にはもちろんこの名前の方が良く似合う。

 ところで、このかんむり座から隣のヘラクレス座にかけては「ヘラクレス座・かんむり座グレート・ウォール」呼ばれる直径100億光年にも及ぶ巨大な銀河フィラメントが存在しているのだという。もちろん、我々には見ることはできない。2013年に発見されたこの巨大な構造は、過去のガンマ線バーストの分布からあぶりだされてきたものというが、巨大な謎に包まれたままだ。
 宇宙誕生からわずか38億年という初期の宇宙に形成された巨大な何ものかが、この静かそうに見える空間に横たわり、
100億年前のメッセージを今も届けている。


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